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Bitcoin の急騰で仮想銀行強盗が増加 

Dec 05, 2013 12:19 AM

仮想通貨 Bitcoin は、過去数週間で価値が急騰していますが、同時にバブルを懸念する声も大きくなっています。投資家が押し寄せるようになった今、不安材料は価値の崩壊だけではありません。この数週間で、Bitcoin ウォレットとオンラインバンキングのサービスが攻撃を受け、数百万ドル相当の仮想通貨が盗まれるという事件が相次いでいます。
 

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図 1. 最近発生した Bitcoin 盗難の被害額(11 月 29 日時点の米ドル換算額)
 

数百万ドル規模の盗難

現在まで続く攻撃の波が始まったのは 11 月 7 日のことで、オーストラリアの Bitcoin ウォレットサービスである Inputs.io が 2 度にわたって攻撃を受け、業務を閉鎖したと発表しました。被害総額は 4,100 Bitcoin(このブログの執筆時点で 434 万ドル相当)にも及んでいます。Inputs.io によると、攻撃者はサーバーホスト側の欠陥を突いて 2 要素認証をすり抜けました。この攻撃によって、Inputs.io のサイトはユーザーの預金を返還できない状態になっています。

人々はなぜ Inputs.io に Bitcoin を預けていたのでしょうか。Inputs.io には、「ウォレットを混在させて」ユーザー間で Bitcoin を交換するサービスがあります。実質的には匿名化サービスの一種であり、Bitcoin 取引の追跡を難しくするものです。しかし、Bitcoin ウォレットに対してこのレベルのアクセスが可能だったことこそ、Inputs.io が攻撃に対して脆弱だった原因かもしれません。

Inputs.io の経営者は、TradeFortress という別名で知られる若いオーストラリア人です。盗難事件後、オーストラリア ABC ニュースのインタビューに応じた同氏は、Bitcoin を盗んだのは自分ではないと主張していますが、不思議なのはこの事件を警察に届けるつもりがないと語っていることです。「Bitcoin が相手では、警察でも一般ユーザー以上の情報は入手できません。Bitcoin は自分自身で預金を管理するものだと主張する人もいるでしょう」と TradeFortress 氏は述べています。

その数日後には次の事件が、今度は中国で発生しました。Bitcoin 取引所の GBL が 11 月 11 日に突然サイトを閉鎖し、投資家の資金 1,270 万ドルもサイトとともに姿を消してしまったのです。詳しく調査したところ、GBL は詐欺だったことが判明しました。GBL は香港政府による認可を受けていると称していましたが、単に事業所として登録されているだけで、金融サービス業としての営業認可は受けていなかったことが判明しています。

この事件のすぐ後に続いたのが、チェコの Bitcoin 取引所 Bitcash.cz に対する攻撃の報道です。この事件ではおよそ 4,000 人が被害を受け、被害総額は 51 万 4,000 ドルに達しました。ところが、これだけ儲けても満足しなかったと見える攻撃者は、Bitcash.cz の電子メールアドレスを利用して同サイトのユーザーに電子メールを送信し、米国の回収会社を使って盗まれた資金を取り戻そうとしていると謳い、そのコストとして各ユーザーに 2 Bitcoin ずつを負担するよう求めました。

最も新しい事件では、デンマークの Bitcoin 決済処理業兼ウォレットプロバイダである BIPS 社が被害を受けましたが、これは組織的な攻撃に狙われてシステムが侵害された結果であったことが今週になって確認されました。同社によると、何件かのコンシューマ向けウォレットが侵入を受け、この攻撃でおよそ 1,295 Bitcoin(約 137 万ドル相当)が盗み出されたと推定されますが、盗まれた Bitcoin の大部分は顧客ではなく BIPS 社が所有するものでした。攻撃を受けた後、BIPS 社はコンシューマ向けウォレットサービスを終了し、商取引向け処理に専念すると発表しています。
 

資産を保護するために

Bitcoin は安全であると一般的に言われていますが、それはあくまでも偽造が不可能という意味です(いつまでも不可能とは限りませんが)。最近の盗難事件で明らかになったように、盗まれないという意味で安全なのではありません。

では、Bitcoin の盗難を防ぐためにどのような対策が取れるのでしょうか。これまでに確認された攻撃の種類から考えると、Bitcoin を保管する場所に相当の注意を払うことが最優先です。たとえば、GBL は香港政府の認可を受けていると称していましたが、事実ではありませんでした。同様に、Inputs.io のウォレット混在サービスもプライバシー重視の利用者には魅力的だったかもしれませんが、利用者の資金にアクセスできるレベルがセキュリティ上のリスクになった可能性もあります。

Inputs.io が攻撃を受けた後で、経営者の TradeFortress 氏はこう述べています。「インターネットに接続したコンピュータからアクセスできるような形で Bitcoin を保存することはお勧めしません」。BIPS 社に対する攻撃で、同社 CEO のクリス・ヘンリクセン(Kris Henriksen)氏も、即座にオンラインウォレットのセキュリティについて認識を改めたうえ、従業員にもオンラインウォレットをいっさい使わないよう忠告したほどです。

Bitcoin を保管できる場所はオンラインの仮想ウォレットだけであると多くの人々が思い込んでいますが、実際にはオフラインで保管することも可能です。これには、まず USB メモリなどのオフラインのデバイスに保存するウォレットを作成し、次にこのウォレットのアドレスに Bitcoin を送信します。推奨方法とは言え、オフラインウォレットを作成する手順は少々煩雑ですが、少なくとも理論上は、オンラインストレージよりも安全です。技術的には、Bitcoin 自体はオンラインのままであり、Bitcoin へのアクセス手段である秘密鍵がオフラインになるだけです。

オフラインストレージをさらにもう一歩進めれば、電子的なデバイスをまったく介在させず紙のウォレットを作成するという方法も可能です。ただし、紙ベースのウォレットは現金と同じリスクを伴うことになるので、どこか安全な場所に保管しなければなりません。

オンラインサービスプロバイダも、それぞれセキュリティの強化に乗り出しています。世界有数の Bitcoin 取引所である Mt.Gox は、ワンタイムパスワード(OTP)カードを導入することで追加のセキュリティ層を実装しており、このカードはただちに全ユーザーに送付される予定です。Mt.Gox によれば、このカードは単独で使うことも、他の 2 要素認証方式と組み合わせて使うこともできます。たとえば、身元確認のために差し込む USB キーの Yubikey などに対応しています。

Mt.Gox で環境設定にこのカードを入力すれば、ログイン時に追加のパスワードが必要になるようにアカウントを設定できます。カード上のボタンを押すと、ログインごとに一意のパスワードが生成されます。
 

Bitcoin の通貨価値の急騰

Bitcoin 盗難の急増は、Bitcoin の通貨価値がこの数週間で急騰したという事実に間違いなく関係しています。このブログの執筆時点で、1 Bitcoin はおよそ 1,060 ドルに相当します。その価値は今年に入ってから 45 倍にも達していますが、その高騰の大半は過去数週間に起きています。1 カ月前、Bitcoin は 190 ドル前後で取引されていました。

こうした急騰の結果、少額の Bitcoin しか所有していなかったとしても、今ではそれが高額になっています。これを何より端的に物語っているのが、廃棄したラップトップコンピュータの中に、7,500 Bitcoin 分のウォレットが入ったままだったことに気付いた IT 専門家のエピソードでしょう。これは 2009 年に自分でマイニングした Bitcoin であり、その当時には数ドル程度の価値しかありませんでした。
 

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図 2. 過去 6 カ月間における Bitcoin - 米ドルの為替レート(データ出典: bitcoincharts.com
 

その後 Bitcoin の価値は、時折下落しながらも大幅に上昇し続けています。10 月初めにアンダーグラウンドのドラッグ販売サイト Silk Road が FBI によって閉鎖に追い込まれたときには、Bitcoin の価値が急落するのではないかという憶測が流れました。Bitcoin はアンダーグラウンドで広く使われているからです。この閉鎖劇の直後には、確かに Bitcoin 売りも見られましたが、数日のうちには回復基調となり、Bitcoin はまた高騰し始めました。

この急騰の原因としては、規制当局が Bitcoin を真剣に考え始めたという事実も関係しているかもしれません。たとえば、米国上院の国土安全保障・政府問題委員会は先週、仮想通貨に関する公聴会を開き、司法省の代表が Bitcoin を「合法的な交換手段である」と述べました。これに対し、同委員会のトム・カーパー(Tom Carper)委員長は、議会と政府が仮想通貨について「賢明で良識的、かつ効果的な政策」を決定する必要があると述べています。

一方で、Bitcoin の急騰がバブルを生み出すのではないかという懸念も広がりつつあります。対ドル為替レートのグラフを見ると、すぐに思い当たる疑問点があります。Bitcoin を決済方法として認める企業の数は明らかに増えていますが、その増え方は通貨価値の高騰に追いついていないということです。どちらかといえば、現在の高騰をもたらしている大きい原因は思惑買いだと考えられ、歴史が証明しているとおり、そのような熱狂的な買いは不幸な結果に終わることが少なくありません

 

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