Endpoint Protection

 View Only

Regin: 人目に付かずに監視活動が可能な最悪のスパイツール 

Nov 26, 2014 09:07 PM

Code_tunnel_concept.png

 

Regin と呼ばれるこの高度なマルウェアは、少なくとも 2008 年以降、世界のさまざまな標的に対する組織的なスパイ活動に利用されています。Regin はバックドア型のトロイの木馬であり、その構造から類を見ない技術力が伺える複雑なマルウェアです。標的に応じてさまざまな機能をカスタマイズできるため、攻撃者にとって大規模な監視活動を行うための強力なフレームワークであり、政府機関、インフラ運営組織、企業、研究者、個人を狙ったスパイ活動に利用されています。

開発には年単位、または少なくとも月単位の期間を要したと考えられ、その痕跡を隠すために開発者は努力を惜しまなかったようです。その機能や豊富なリソースから、Regin は国家によって使用されている主要なサイバースパイツールの 1 つだと思われます。

Backdoor.Reginホワイトペーパー(英語)で説明されているように、多段階型の脅威であり、第 1 段階を除いて、各段階は隠蔽されて暗号化されています。第 1 段階が実行されると、全部で 5 段階からなる後続の段階が順に復号されてロードされる仕組みです。個々の段階からは、パッケージの全体に関する情報はほとんど得られません。5 つの段階のすべてを入手して初めて、この脅威の分析と理解が可能になるのです。

fig1-architecture.png
図 1. Regin の 5 つの段階

また、Regin はモジュール型の手法を採用しているため、標的に応じて用意されたカスタム機能をロードすることができます。この手法は、FlamerWeevil(The Mask)といった高度なマルウェアファミリーでも見られるものです。また、多段階にロードされる構造は、DuquStuxnet で採用されているものに類似しています。

活動の時系列と標的のプロファイル
Regin の感染は 2008 年から 2011 年にかけて、さまざまな組織で確認されていましたが、その後、突然活動を休止しています。2013 年になって、マルウェアの新しいバージョンによる活動が再開されました。標的には、民間企業、政府機関、研究機関が含まれます。感染のほぼ半数は、個人や小規模企業を標的とするものです。通信会社に対する攻撃は、各社のインフラを経由する通話にアクセスすることを狙ったものだと思われます。

fig2-sectors.png
図 2. Regin の感染件数の業種別内訳

感染は地理的にも分散していて、主に 10 カ国で確認されています。

fig3-countries.png

図 3. Regin の感染件数の国別内訳

感染経路とペイロード
感染経路は標的によって異なり、このブログの執筆時点で、再現可能な経路は確認されていません。一部の標的は、有名な Web サイトに偽装したサイトにアクセスするように仕向けられた後に、Web ブラウザを介して、またはアプリケーションを悪用されて、この脅威がインストールされたと考えられます。あるコンピュータのログファイルには、未確認の悪用コードによって Yahoo! Instant Messenger から Regin が侵入した痕跡が記録されていました。

Regin はモジュール型の手法を採用しているため、攻撃者は、必要に応じて個々の標的に合わせたカスタム機能をロードすることが可能です。一部のカスタムペイロードは非常に高度な機能を備え、特定分野における高い技術力を示していることから、開発者が高水準のリソースを抱えていることを重ねて証明しています。

Regin には、数十種類ものペイロードが存在し、リモートアクセス型のトロイの木馬(RAT)のさまざまな機能を標準で装備しています。たとえば、スクリーンショットの撮影、マウスのポイントアンドクリック操作の制御、パスワードの窃取、ネットワークトラフィックの監視、削除済みファイルの復元などの機能です。

Microsoft IIS Web サーバーのトラフィックを監視したり、携帯電話の基地局コントローラの管理トラフィックを盗聴したりするなど、さらに特化された高度なペイロードモジュールも確認されています。

ステルス性
Regin の開発者は、この脅威が人目に付かずに活動できるように相当な労力を費やしています。目立たないということは、何年間にもわたる持続的なスパイ活動に利用できるということです。存在が検出されたとしても、どのような活動を実行しているかを確認するのは非常に難しく、今回も、ペイロードがサンプルファイルを復号してようやく、ペイロードを分析することができました。

「ステルス」機能として備えられているのは、フォレンジック対策機能、カスタム開発された暗号化仮想ファイルシステム(EVFS)、RC5 の亜種という通常使われているものとは別の暗号化方式などです。また、攻撃者と秘密裏に通信するために、ICMP の ping、HTTP cookies に埋め込まれたコマンド、カスタムの TCP プロトコルと UDP プロトコルなど、複数の高度な手法を使用しています。

まとめ
Regin は非常に複雑な脅威であり、組織的なデータ収集活動や情報収集活動に利用されています。開発と運用には膨大な時間とリソースを投資する必要があることから、背後に国家が存在すると考えられるでしょう。標的に対して、長期間にわたり執拗に監視活動を実行するうえで非常に適した設計になっています。

Regin が発見されたことで、情報収集活動に利用するツールを開発するために、膨大な投資が継続的に実行されていることが明らかになりました。Regin には、まだ見つかっていないコンポーネントが多数あり、その他の機能や別のバージョンが存在する可能性があります。シマンテックは今後も分析活動を継続し、新しい発見があり次第、情報を提供する予定です。

追加情報
侵害の兆候や、さらに詳しい技術情報については、ホワイトペーパー『Regin: Top-tier espionage tool enables stealthy surveillance(Regin: 人目に付かずに監視活動が可能な最悪のスパイツール)』(英語)を参照してください。

保護対策
シマンテック製品およびノートン製品は、この脅威を Backdoor.Regin として検出します。

 

* 日本語版セキュリティレスポンスブログの RSS フィードを購読するには、http://www.symantec.com/connect/ja/item-feeds/blog/2261/feed/all/ja にアクセスしてください。

Statistics
0 Favorited
0 Views
0 Files
0 Shares
0 Downloads

Tags and Keywords

Related Entries and Links

No Related Resource entered.