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バックアップのススメ
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「増分」「差分」の活用でバックアップの効率化を図る!

前回までの連載で、データ保護とシステム保護の両面でバックアップを実施していくことが、健全なシステム運用に不可欠なことを説明しました。しかし、いざバックアップを実施するとなると、ストレージの消費量に疑問が生まれるでしょう。1つのサーバーでも数GB~数十GBに達するデータを、複数に渡るサーバーを対象に高頻度で全てバックアップしていたら、どの程度のストレージが必要になるのか不安になります。しかし、バックアップの方法には、ストレージの消費を抑えて、効率的なバックアップを実現するための方法が用意されています。そこで今回はストレージの消費を抑えたバックアップの方法について見ていくことにしましょう。

無計画なバックアップは無駄な投資コストを増やすだけ

バックアップを考える上では、RTO(Recovery Time Objective:目標復旧時間)とRPO(Recovery Point Objective:目標復旧時点)を、システムの重要性にあわせて見定める必要があることを前回、前々回の連載で説明しました。RTOを最小化し、その一方でRPOを最大化することができれば、ノンストップなシステムでありながら、無制限にさかのぼれるバックアップデータが存在するという理想的な環境が実現できます。しかし、そのためには多大な資金が必要となるため、本当に重要な部分に集中的に投資しなくては非効率になるからです。

実際に、バックアップに要するデータ量に目を向けると、バックアップを保存しておく期間が長くなり、回数が増えれば、ストレージの消費量は指数関数的に増えていきます。また、ノンストップで稼働するシステムを構築しようとすれば、直前までのデータを確実にバックアップしておける環境を用意する必要がある上に、過去のログや変更も保存しておくとなると、こちらも多大なストレージを必要とすることになります。

システムの規模にもよりまずが一般的に考えて、全てのデータを常にリアルタイムでバックアップしておくことは、相当な資金力があっても難しいのが実情です。そこで必要となるのが、「差分」や「増分」など、変更点のみのバックアップを実施し、ストレージの消費量を抑えながらRPOの最大化を図るための方法です。 これらのバックアップ手法をシステムにあわせてきちんと採用することで、効率的なバックアップへの投資が可能になるのです。

それぞれのバックアップ方式のメリット/デメリットはなに?

それでは、ストレージの消費を抑えた効率的なバックアップにはどのような方法があるのかを見ていくことにしましょう。現在、バックアップでは3つの方法が主流となっています。

1つ目が最も基本的な方法であるフルバックアップです。その名の通り、バックアップ対象の全てをバックアップする方式です。フルバックアップ方式の利点は、バックアップしたすべてのデータを1ケ所に保存するため、リカバリする際にも1つの操作で全てのデータの回復ができることです。一方で、短所としてはバックアップで全てのデータを保存しなくてはならないので、バックアップに時間がかかることが挙げられます。

また、一般的なフルバックアップの実施方法では、ストレージの消費を抑えるためにバックアップを実施する際に過去のデータを全て上書きしてしまうケースが多く見られます。この方法では、ウイルスなどの混入によって過去のある地点まで戻す必要がある場合でも、最後にバックアップした状態にしか戻せません。もしバージョンをいくつか残したい場合には、それなりのストレージの消費を覚悟しなくてはなりません。

2つ目が増分バックアップと呼ばれる方式になります。こちらは、はじめにフルバックアップを実施し、その後、運用している中で更新・追加されたファイルのみをバックアップする方法です。2回目以降のバックアップにおいては、n-1回目(2回目なら1回目、3回目なら2回目)のファイルから更新・追加されたファイルのみをバックアップします。

メリットとしては、前回のバックアップデータとの異なる点のみをバックアップするのみであるため、高速なバックアップが可能な点と、バックアップに利用するストレージの使用量を極力抑えられる点です。デメリットとしては、バックアップファイルが複数になるため、リカバリする際の管理や手順が複雑化することが挙げられます。

そして3つ目が差分バックアップと呼ばれる方式です。フルバックアップを実施した後に更新されたファイルをバックアップするのは、増分バックアップと同様になりますが、フルバックアップ実施後のデータからの変更点を累積的にバックアップする点が異なります。差分バックアップのメリットは、リカバリする場合の容易性にあります。最新の状態に戻す場合でも、フルバックアップのデータと最後にバックアップしたデータの2つを戻すだけで完了します。一方でデメリットとしては、時間が経過してフルバックアップとの差分が大きくなると共に、バックアップに要する時間やストレージの消費量が相乗的に増大していく点になります。

「フル」「差分」「増分」どれが理想のバックアップ方法?

先にあげた3つのバックアップ方法において、どれが理想的なバックアップ方法となるのでしょうか。それには、システム保護とデータ保護の両面で考える必要があります。システム保護はダウンタイムの短縮、すなわちRTOの短縮が命題とされていますので、リカバリタイムの最小化が求められます。一方、データ保護についてはRPOの最小化が最重要ポイントになるため、バックアップの頻度をいかに高めるかがポイントとなります。

これと考慮すると、システム保護においては最もリカバリが容易なフルバックアップをシステムに変更が加えられるたびに実施し、ダウンタイムをなるべく少なくするのが理想となります。ただ、この方法の場合、バックアップをするたびにシステムのデータ量と同じだけのストレージを消費することとなり、データ量が膨大になるという欠点も生じます。

一方で差分バックアップや増分バックアップを利用することで、ストレージの消費を抑えられますが、増分バックアップはリカバリに時間がかかるため、通常の運用ではダウンタイムの最小化に重きを置くシステム保護ではあまり現実的な選択肢とはいえません。このため、バックアップに投資できる余裕があれば、リカバリが迅速なフルバックアップをシステムに変更が加えられる度に実施し、いくつか、さかのぼったバージョンを残しておく方法がよいといえます。そうでない場合には同じ頻度で差分バックアップを実施したり、増分バックアップでも効率的にバックアップ/リカバリを可能にするバックアップツールを利用するのが良いでしょう。

データ保護の場合には、システムによっては1日単位ないしはそれよりも高頻度でバックアップを実施する必要があります。この視点から見ると、フルバックアップはバックアップに多大な時間を要することから選択肢からは消え、最も短時間でバックアップを実施できる増分バックアップに利があるように見えます。ただ、増分バックアップにおいてもリカバリする場合に、複雑な作業が必要なるというデメリットがあります。差分バックアップの場合には、日数が経過してフルバックアップしたデータのとの差が大きくなるとバックアップに時間を要するようになりますが、半面リカバリは高速にできるというメリットがあります。

このため、バックアップに要する時間を短縮したい場合には増分バックアップを、リカバリまでの時間を短縮したい場合には差分バックアップを採用するのが選択肢となるでしょう。なお、差分バックアップを利用する場合は、データの増加量にも大きく関係しますが、タイムスケジュールを組んで1週間ごとにフルバックアップを実施し、日々のバックアップを差分バックアップで埋めていくのが現実的な方法になるでしょう。

このように増分バックアップや差分バックアップという方法を用いることでストレージの消費を抑えながら、効果的なバックアップが可能になりますが、いずれの方法にしても単体で効果を発揮できるのは、小~中規模のシステムにとどまります。ある程度の規模になった場合には、RAIDシステムやクラスタリング、テープデバイスなど、高機能なハードウェアを組み合わせたソリューションが必要となってくるのです。そこで次回は、ハードウェア面でのバックアップの効率化について目を向けていくことにしましょう。

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