バックアップ構成はどうしたらよいの? 応用編
前回の内容は、バックアップ構成の基礎編としてスタンドアロン型とクライアント・サーバー型のバックアップについて話をしました。応用編となる今回は、ネットワークを利用したバックアップについて詳しく触れていくことにします。複数のシステムのバックアップを効率的に実施するには、NASやSANに代表されるネットワークストレージを利用したバックアップ構成が不可欠となっているのです。
初期投資を抑えたネットワークバックアップ
ネットワークを介したバックアップの方法にはいくつかの手法があります。1つ目がバックアップ用にサーバーを構築し、バックアップする方法です。これは、バックアップ専門にサーバーを構築し、そこに容量の大きなストレージを接続しておき、バックアップサーバーとして利用する方法になります。ntbackupなどのバックアップソフトでスケジュールを組む際に、バックアップの保存先をバックアップ用のサーバーに指定すれば完了します。最も基本的な方法といえるでしょう。
もし、初期投資を極力抑えたいのであれば、稼働率の低いサーバーをバックアップ先に指定する方法もあります。例えばメールサーバーやWebサーバーのバックアップすべきデータを、ファイルサーバーなどのあまり負荷の高くないサーバーに保存するのです。この方法のメリットはすでに稼動しているサーバーをバックアップデバイスとして利用するので、投資がほとんど必要のない点です。基本的にはハードディスクを増設する程度の投資で済むでしょう。
デメリットは、性能や信頼性がそれほど高くない部分です。バックアップ専用のサーバーではなく、他の目的で構築されたサーバーであるため、バックアップの書き込み時やリカバリ時には本来の処理が遅くなる可能性があります。また、バックアップに利用しているサーバー自体が本来の処理で頻繁にディスクアクセスを行うため、ダウンしてしまう可能性もあります。もちろん、RAIDシステムを構成したり、テープデバイスを二次保管場所と設けたりすることで信頼性は向上できます。もし、この構成でバックアップシステムを構築する場合には、RAIDやテープデバイスを付加するとよいでしょう。
さまざまなメリットを持つNASのバックアップ
ネットワーク経由のバックアップで現在の多くの企業で取り入れられているのが、NAS(Network Attached Storage)を利用した方法です。NASは、ファイルサーバー用途に特化したストレージとして登場しました。ファイルサーバー専用のOSを搭載することによって、Windowsを使ったOSと比較して高速なスループットの実現と安定性の向上を果たしました。また、NASには、利用者数によるライセンス課金が不要になったり、ネットワークに接続するだけで即座に利用できるようになったり、マルチOS環境下でのファイル共有が手軽にできるなどさまざまなメリットがありました。こうしたメリットが認知された結果、多くの企業でさまざまな用途に利用されるようになっています。
NASには個人向けの数万円で購入できる製品から、大規模システム向けの1千万円近くする製品まで様々な製品があります。その違いはディスクの容量と、機能や信頼性を高めるための各種の機能、そして拡張性になります。個人向けの製品では、容量は数百GB~1TB程度で、RAIDは0と1(RAIDについてはこちらを参照)にとどまるほか、単体での使用が想定されたものとなっており拡張性はほとんどありません。
一方、企業向けの製品になると容量は数~数十TB、複数のディスクに障害が起きても継続運用できるRAID5以上をサポートしているほか、稼働中でもハードディスクを交換できるホットスワップも利用可能です。また、拡張性においては複数のNASを一元管理するためのソフトが付属したり、テープデバイスを接続できたりする製品もあります。こうした拡張機能を利用すれば、必要に応じてNASを増設することで効率的なバックアップができるようになるほか、テープデバイスを接続すれば敷居の高かったD2D2Tのバックアップソリューションが簡単に実現できるようになるのです。
ストレージ専門のネットワークを構築するSAN
NASよりより信頼性が高く、大規模なバックアップ環境を構築する際に用いられるのがSAN(Storage Area Network)と呼ばれるソリューションになります。SANはストレージのみを接続した高速なネットワークを構築し、これをそれぞれのサーバーに接続することで、NASよりも高速かつ信頼性の高いデータ保管の環境を実現するものとなります。別の言い方をすると、本来は1つの場所にあるサーバーのOS機能とストレージを物理的に別々の場所においておき、その2つを専用のネットワークで結ぶことでそれぞれ一元管理する形態となります。
SANはファイバチャネルと呼ばれるストレージのデータ転送専用のネットワークないしは、LANを経由して同様の働きをするiSCSIと呼ばれるプロトコルをサポートした機器、そして高性能なストレージを用意する必要があるため、初期コストがかかります。一方で、通常のLANを解してバックアップを実施する方法と比較すると、ほかのトラフィックの影響を受けずにデータアクセスやバックアップが可能になり、データ転送速度、安定性ともに大幅に向上できるというメリットが生まれます。
なお、SANをバックアップに利用する場合には、ディスクアレイに加えてテープデバイスをSAN上に設置することで、D2D2TのバックアップをSAN上で完結することが可能になります。今のところSANを構築するのには高額なイニシャルコストがかかるため、利用しているのは一部の大規模なシステムに限られますが、今後機器の低廉化によって普及していくものと見られています。
大規模災害に対応するディザスタリカバリ
ここまで紹介したバックアップ構成はシステムが稼働している環境とバックアップ環境が1つの場所にあるケースを見てきました。こうした環境の場合、地震や火災などの大規模災害が生じた場合には、稼動しているシステムがダウンするだけなく、バックアップしたデータも消失する危険性があります。また、停電が起きればデータは消失しなくとも、システムは停止して、その間のビジネスはストップしてしまいます。
このような大規模災害に備えて遠隔地でバックアップしたり、サブのシステムを稼動させておくのがディザスタリカバリと呼ばれるソリューションです。ディザスタリカバリでは、東京と大阪ないしは、日本と海外というように、離れた地点にバックアップシステムを設置します。それを専用の回線やインターネット上に作り出した仮想回線を経由してデータを転送し、バックアップを実現します。
この仕組みによってシステムを設置した拠点が大規模災害などにあった場合でもバックアップされたデータは確実に残るようになります。また、サブのシステムを別途用意し、リアルタイムで同期させるオンラインバックアップを実施しておけば、片方のシステムが被災してストップした場合でもビジネスをノンストップで継続できるようになります。
ディザスタリカバリを実施するには、これまでに紹介してきたようなバックアップ構成に加えて外部ネットワークを介したシステムとバックアップシステムを接続するネットワークが必要となります。バックアップデータは外部に流出しては問題のあるデータである可能性が高いため、通信キャリアやISP(Internet Service Provider)が提供する拠点間接続用のネットワークを利用するか、専用の機器を使ってインターネット上に仮想的に専用線を作り出すインターネットVPN(Virtual Private Network)などを利用する必要があります。
拠点間接続用のネットワークでは回線を借りることとなるので、毎月のランニングコストが発生することになり、インターネットVPNを利用する場合には導入時のイニシャルコストが発生します。どちらを選ぶかは、バックアップを実施するデータ量やシステムの内容にもよりますが、リアルタイムの同期を必要とするオンラインバックアップに利用する場合には高品質なネットワークが必要となるので前者を、1日1回などのバッチ処理型のバックアップであればコストの安い後者を利用するとよいでしょう。


