アプリケーション毎に異なるバックアップ環境を整備しよう
以前の連載で、Windows標準のバックアップツールである「NTBACKUP」を使ったバックアップの方法について触れました。このntbackupではサポートできないバックアップの1つに特定のアプリケーションで保存されたデータのバックアップがあげられます。アプリケーションが独自のフォーマットを採用しているケースでは、通常のデータのバックアップを実施しただけではリカバリができなかったり、差分バックアップが行えなかったりする可能性があります。またリアルタイムバックアップが必須のケースも存在します。こうしたケースには、メールシステムでよく利用されている「Exchange」や「Notes」、またデータベースソフトとして有名な「Oracle」「SQL Server」「DB2」などのデータが該当します。そこで、今回はこうした重要なアプリケーションのバックアップについて見ていくことにしましょう。
実は独自フォーマットのデータが重要!?
企業の中に存在する重要なデータは、独自のフォーマット形式でデータを扱うアプリケーションが生成しているというケースは数多くあります。たとえば、ERPシステムや販売・在庫管理システム、データベース、メールシステムなどが扱うデータは企業にとってとても重要な情報ですが、その大半は効率的にデータを読み書きするために独自のフォーマットを採用しています。
こうした独自フォーマットでは、RAIDのように複雑に分散させながらデータを管理しているケースや、1つのファイルですべてのデータを管理しているケースがあります。その場合、通常のバックアップではどのファイルを復元すればよいのかわからず、手動でのリカバリが実施できないこともあるのです。また、ECサイトのデータベースサーバーなどは、決済情報などが含まれた重要なデータが高頻度で更新されているので、リアルタイムでのバックアップが必須となっているのです。
メールシステムには柔軟なバックアップが必要とされる
実際に独自のフォーマット形式を採用し、かつバックアップの必要性が高いアプリケーションとしてマイクロソフトの「Exchange Server」やIBMの「Notes/Domino」が挙げられます。両製品ともメールサーバーやグループウェア機能が主な用途となりますが、いずれもユーザー同士がコミュニケーションやスケジュール管理を行うのに必須のツールであり、ダウンタイム=業務の停止につながるシステムです。このため、バックアップも効率的に実施する必要があります。
しかし、メールサーバーは、多数のユーザーのメールの送受信を恒常的に行っており、グループウェアなども社内からのアクセスがひっきりなしに行われています。このため、システムに負荷をかけずにntbackupなどを使ってバックアップを実施する場合には、メールの送受信が極力少ない深夜などに実施しなくてはなりません。そうなると最も高頻度でバックアップを実施しても前日分のデータしか残りません。また、データもユーザーごとやメールごとに分けてはバックアップできないため、ユーザーの操作ミスによるデータの消失にも対応できないなど柔軟性に欠ける部分もあります。
このような問題に対処するためには、やはり専用のバックアップソフトの存在が必要不可欠となります。例えば、シマンテックの「Backup Exec」には、「Lotus Domino Server エージェント」や「Microsoft Exchange Server エージェント」という専用のオプション製品が用意されています。これらを利用すると、リアルタイムでのデータバックアップや、ユーザー毎、個別のメール毎のリカバリなども可能になります。また、リカバリもウイザードに従えば完了するので、ダウンタイムを極小化できるようになるのです。
特にシマンテックの「Microsoft Exchange Server エージェント」には、「Granular Recovery Technology(GRT)」というテクノロジーが装備されており、ほかにない機能が備わっています。これは、バックアップデータをExchangeとまったく同じファイル形式で保存するもので、柔軟なバックアップとリストアを実現する技術です。GRTを用いてバックアップされたデータは、Exchange同様に操作できるようになります。
例えば、バックアップしたデータから特定のデータのみをリカバリしたい場合に、対象となるメールボックスからそのデータを選択してリストアするといったことが可能になります。もちろん、リアルタイムのバックアップも可能なほか、有効期限を過ぎたジョブを自動的に削除するといったことも可能になります。この結果、バックアップジョブのパフォーマンスを高めるだけでなく、消費するストレージ容量も極小化できます。さらにGRTの適用範囲はExchangeにとどまらず、「SharePoint Server」「Active Directory」にも対応しているので、Windows系システムを包括してバックアップ・リストアできるという点でも有益なソリューションといえるでしょう。
データベースにも専用ソフトが必須に
ECサイトでの決済処理はもちろん、顧客管理、商品管理など、膨大なデータ管理に、いまやデータベースは不可欠な存在になっています。このデータベースに格納されるデータも、標準のバックアップツールや手動バックアップでは対応しがたいケースです。
というのも、ECサイトや販売・在庫管理システムなどに利用されているデータベースの場合、メールサーバーよりもはるかに高頻度かつ複雑なアクセスが発生しています。また、扱うデータの内容にしても、顧客の個人情報や決済情報、在庫情報など、失われると問題のあるデータが多く含まれます。これらがもし失われれば、購入した商品の未発送や、登録したはずの会員データの消失、出荷した在庫状況が不明になるなど、ビジネスに大きな打撃があるのと同時に、企業の信用の失墜にもつながる可能性があります。1日毎のオフラインバックアップではあまりに頻度が低すぎるといえるでしょう。
こうした課題を解決すべく、専門のバックアップソフトでは、多くが主流のデータベースアプリケーションに対応したオプションが用意されています。先と同じくBackup Execを例に挙げると、現在の主流である「Oracle」やIBMの「DB2」、マイクロソフトの「SQL Server」向けのエージェントがラインアップされています。いずれの製品においても、リアルタイムで同期を実施しながらのオンラインバックアップをサポートしているため、突然のシステムダウンにもあわてることなくRPOを最小化するための最善の策を実施してくれます。リカバリについてもメールサーバー向けのエージェントと同様に迅速な復旧をサポートしています。
製品選びのポイントは一元管理
このようなアプリケーションに対応したバックアップソフトを選択する場合の重要なポイントはどういった部分になるのでしょうか? 最も大切なポイントは「いろいろと選り好みをしない」ことだと言えます。「データベースのバックアップについてはA社の製品が最も簡単にリカバリできるのでA社を。メールサーバーのバックアップは関連会社と同じB社の製品で。それ以外の通常のデータは価格の安いC社の製品を」という選び方をすると運用面で多大な労力を伴うことになります。
ここまでの連載でもたびたび触れてきましたが、現在の企業のシステムは一人では把握できないほど複雑化した状況にあり、さまざまなシステムが稼動しています。その管理だけでも大変なのに、バックアップを実施するのに複数のアプリケーションを操作しなくてはならず、リカバリするのも説明書とにらめっこというのはいかがなものでしょうか。想像しただけでうんざりします。こうした状況に陥らないためにもバックアップソフトは管理面を重視して1つに絞りこむべきだといえます。
1つのバックアップソフトとそのオプション製品に絞り込むことによって、クライアントからサーバーOS、そして各種のアプリケーションが1つのインターフェース上で実施でき、状況把握も容易にできるようになります。RTO、RPOを最小化するためのバックアップに対してまさに磐石な体制を構築できるというわけです。


